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最高裁判所第三小法廷 昭和26年(オ)15号 判決 1952年3月04日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人代理人岡崎秀太郎、同岡村大及び同平川巴の各上告趣旨はいずれも末尾添附別紙記載のとおりである。

上告代理人岡崎秀太郎、同岡村大の上告理由第三点について

民事訴訟法が同法第七一条の参加について同法第六二条を準用して居る処等から見ると、右参加は一応所論の様に参加前の原告及被告(以下単に原告、被告と書く)双方を相手方とすることを要するものの様に見える。しかし原告又は被告が参加人の主張、請求を全部認めて争わない場合においては、かかる者をも相手方としなければならないものではなく、争う者だけを相手方として参加の申立をしても差支ないものと解するを相当とする。

法は第七一条においては単に「当事者として参加」といつて居り第六〇条の如く「当事者双方を共同被告として」とはいつて居ないのである。参加人の主張、請求を全部認めて争わない者と参加人との間においては、元来訴訟をする何等の利益も必要もないのであり、確認の訴訟が提起されても、その利益なきものとして却下さるべき関係にあるものである。法が原告、被告及参加人三者の権利関係を一度に確定せんとする趣旨はわかるけれども、さりとて、その為め右の如く訴訟をする何等の利益もなく、又意思もない者に無理に訴訟をさせるいわれはない。つまりそんなことをして迄強いて三面訴訟にしなければならない程の必要あるものとは思えないのである。(第六二条の準用は原、被告双方が相手方とされた場合に関するものと見るべきである。)論旨は以上と異る見解に立脚するもので採るを得ない。その他各代理人の各論旨はいずれも最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律第一乃至三号の上告理由に該当せず又同法に所謂「法令の解釈に関する重要なる主張を含むもの」とも認められない。(第一審記録を精査して見ると参加申立書訂正以前に右申立書が原告に送達された形跡は全然なく、その他参加人と原告との間に訴訟が繋属した事実は認められない。さればこそ第一審判決では右両者間には全然訴訟関係なきものとして取扱つて居るのである。従つて論旨第四点所論の原審の仮定的判示は全く無用のものであり、これに対する論旨は上告の理由とはならない。その余の論旨は結局原審の原告、被告間の合意解除又は代理権授与行為の意思解釈に関する非難等であつて「法令の解釈に関する」ものではない。なお平川代理人の論旨が右特例法第三号の主張をして居るものとは思えないが、たとえそうとしても論旨掲記の判例はいずれも本件とは異る事実に関するものであつて本件に適切でない。)

よつて民事訴訟法第四〇一条、第九五条、第八九条に従い裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 井上登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

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